今、再びSentencedを語ってみる

SentencedのギタリストにしてメインソングライターでもあったMiika Tenkulaが急逝したのは約3年前の2月19日。死因は、遺伝性心臓病による発作でした。

その死の衝撃は今も鮮明に思い出されます。

当時、オフィシャルに発せられたメッセージ。

 

Sentencedは、Miika Tenkula、親愛なる友、

真に非凡なアーティストでありミュージシャン、

また、Sentencedそのものであった魂の喪失を嘆く

兄弟よ、安らかに…

あなたの音楽と私たちの心の中では、あなたはいつまでも生き続ける

 

正にこのメッセージの通り、真に非凡なアーティストで、MiikaこそがSentencedそのものであったと言っていいでしょう。彼から生み出された名曲の数々がそれを物語っています。Miikaの死から3年。今ここで、再びSentencedを真剣に語ってみたいと思う。

 

彼らの…Miikaの紡ぎ出す音楽の素晴らしさはとても一言や二言で語り尽くせるものではないのですが、あえて言うなら、激しさの中にも全ての楽曲に流れる圧倒的な悲しみと慟哭、それは彼らの音楽が「所詮メタルだから…」というようなネガティブな感情さえも寄せ付けないほど、音楽としての普遍的な美しさが表現されていたように思う。

解散から7年。Miikaの死から3年。

1st~3rd"Amok"までのメロディック・デスメタル期、それ以降のメランコリック・メタル期も、その時々で傑作・名曲を生み出し、いつも最高峰であり続けたSentenced。

 

 

自分のSentenced初体験は、1993年発表の2nd"North From Here"

当時、輸入盤市場で話題になっていたことで購入。このネオクラ・メロデスラッシュと言ってよい作風は、当時のメロデス初心者であった自分には理解に苦しむところであった。

しかし5曲目に収録されていた"Awaiting The Winter Frost"で評価は一変。

寒々としたイントロから一気に弾けてデスラッシュモードに突入!

これでメロディック・デスメタルにのめり込むようになったと言っていいです。

 

 

その後、1995年には3rd"Amok"を発表。

モダンになりすぎずにモダン化したメロディック・デスメタル。

前作からの約1年半でここまで進化するか!と叫びたくなるほどの驚異的な飛躍度を見せ、メロデス界に衝撃を巻き起こした3rdは名曲揃いの傑作だった。

1曲目The War Ain't Overの衝撃と言ったら、卒倒・鳥肌モノでしたね。

そして、2nd収録Awaiting The Winter Frostと後のノーザンメランコリックメタルへの進化に至る架け橋となった曲が7曲目のNepenthであったように思う。

初期のメロデスラッシュは陰も形も無くなったが、それでもメロディック・デスメタルとしてのブルータリティを十二分に残しながらオーセンティックなメタルに寄った作風は、後の北欧メロディック・デスメタル勢にどれほどの影響を与えたことか…。

事実、この1995年は、Dark Tranquillityが2ndのThe Galleryを、In Flamesが1stを発表したばかりの頃で、どちらも"メロディック・デスメタルそのもの"という音楽をやっていた。その後、どちらのバンドもこのAmokのような作風の方面へ流れていくこととなる。

 

ちなみに当時、この後に1stの"Shadows Of The Past"を聴いたんですが、メロデスっていうかガッチガチのデスメタルを普通にやっててビビリましたね。

もう一度聴き返してみましたが…今も俺はダメだわ、これ(笑。

それでもよくよく考えてみると、1st→2nd→3rdとまるで別バンドのような進化を尋常ではないスピードで遂げていて、いかにSentencedというバンドが実験的かつ歩みを止めずに突き進んできたのかというのをまざまざと見せつけられました。

 

そして、一代転機となるEP"Love&Death"の発表。

このミニアルバム収録の1曲目The Way I Wanna Go

もし仮にvoをVille Laihialaに変えて7thの"The Cold White Light"に収録されていたとしても違和感が無く、その後のバンドの音楽性が確定することとなる名曲でした。

メランコリック感を強調しながらも、ベースはオーセンティックなメタル。ゴシックと言えるほど沈鬱ではなく、単なるメロディック・メタルにしては悲哀を帯びている。その絶妙なバランスの中にあったのがノーザンメランコリックメタルだったように思う。

 

 

1997年発売の4th"Down"

このアルバムから、voがVille Laihialaにチェンジ。

ここに至って、完全にメロディック・デスメタルと決別しました。

一部では、ノーザンメランコリックメタルへの変化はVille Laihialaがもたらしたものと認識されているようですがそれは大きな誤解です。前記のEP収録The Way I Wanna Goはvoチェンジ前、Taneli Jarva時代に発表されていたものなので、音楽性をメロデスから脱却させるにあたってvoを交代したというのが正しい解釈になるでしょう。

疾走曲としては、4曲目のBleed

ラストアルバムとなる8th"The Funeral Album"収録のMay Today Become The Day等と同一の方向性を持つ楽曲が、すでに4thの時点で確立されていたのは驚きです。古くもあり新しくもある。色褪せない普遍的音楽。色褪せない…それがSentencedの音楽なのです。

そして、7曲目Sun Won't Shine

CDではVilleの声、無理になのか歌唱法の模索中なのか、歪ませた…Ville流のデス声?…ようになっているのは気になるところですが、どこか憂いを帯びた声質は唯一無二です。

この曲の切なさには今も心が締め付けられるものがあります…

 

 

1998年には5thの"Frozen"が発売。

Villeの声もこのアルバムに至って相当安定。

驚異的な表現力と悲壮感をたたえたこの中音域の声質を持つこの名ヴォーカリストの加入とMiikaの紡ぎ出す楽曲によって、Sentencedの音楽は昇華した。

このアルバムでSentencedというバンドは自身の音楽性を完全に確立したと言ってもいいだろう。このアルバムはもはや"過渡期"ではなく"完成"だった。

まずは4曲目のFor The Love I Bear

Sentencedらしい疾走感を持つ楽曲と言えば6曲目のThe Suiciderを真っ先に挙げたいところだが、5th収録のBleedの焼き直し感が強いのであえてこの曲を選んだ。

オーセンティックなメロディック・メタル路線の曲で、サビのメロディの素晴らしのだが、Ville Laihialaの声質を十二分に生かした楽曲が魅力的である。

しかし、このアルバムの一番の聴き所は7曲目のThe Rain Comes Falling Down

これこそSentenced流のメランコリックメタルと言える楽曲。

この後、6~8thの各アルバムでハイライトとなる楽曲は全てこの曲に端を発している。

 

 

そしていよいよ、伝説の始まりとなる2000年発売の6th"Crimson"

通称"赤盤"と呼ばれるこのアルバム、全体の楽曲の充実度で言えば次作6th"The Cold White Light"の方が遥かに上であったが、個人的な感覚で言えば『わずか、ただ1曲』で北欧メタル史上の…いや、ヘヴィメタル史上の名盤として君臨していると思う。

まずは3曲目のFragileを聴いてほしい。

淡々と進行しながら切ないサビへ傾れ込む展開は、正にこれぞSentencedと言えるメランコリックメタルを具現化している楽曲だと思う。

しかし、この楽曲ですら霞む奇跡の名曲がこのアルバムには存在している。

それが、6曲目のKilling Me Killing You

確かに"Fragile"や"Home In Despair"、"One More Day"という名曲に相応しい楽曲もあるが、それらの曲によってこのアルバムが"名盤"と呼ばれているわけではないと思う。やはり、この"Killing Me Killing You"があったればこそだ。

この絶唱をどう表現すればいいと言うのだろう?

Ville Laihialaのこの唯一無二の声は、やはりMiika Tenkulaの作曲センスによって昇華されていたように思うのだ。Poisonblackで天から授かった類い稀なる"声"という才能の一端を見せつけてはいるが、この"慟哭"とも呼ぶべき暗く、悲しく、それでいて力強いヴォーカルはMiika Tenkulaによってこの世に"生かされ"、そして"輝かされ"ていたと言えなくはないか?

 

 

ついに2002年、最高傑作にして奇跡の名盤7th"The Cold White Light"発表。

前作が"赤盤"なら、こちらは通称"青盤"。寒々としたブルーをベースにシルバーでバンドのロゴである"S"を中央に配置したデザインは、シンプルであり音楽性のイメージにマッチしたものだった。このジャケットがSentencedのアルバムで最も好きだ。

もはや捨て曲が無いとかいうレベルではなく、アルバム全曲が名曲と言っていいほどの圧倒的なクオリティを誇る。オーセンティックなヘヴィメタル然とした曲からバラードに至るまで、全ての楽曲で自身の標榜する"ノーザンメランコリックメタル"を完全に具現化した悲壮感と慟哭を表現しており、過剰な装飾性を省いたシンプルな作風も最高だ。

3曲目のBrief Is The Lightの構成力は圧巻。

メランコリックなイントロからメロディックメタル風に流れていき、ヴォーカルが入ると同時に"静"のパートに突入。そこからサビでの切なさと激しさ。完璧な調和だ。

Sentenceという存在がこの1曲で証明されていると言ってよい。

10曲目のThe Luxury Of A GraveはSentencedらしいノリのある曲。

何が素晴らしいと言えば、その普遍的な美しさと言う他ない。特別なことは何もない。メロディック・メタルとしてのカッコ良さと美しさをSentenced流に表現しただけだ。

なのに、この切なさはなんなのだ?

そして、アルバムのラストである11曲目のNo One There

最強の慟哭ソングであったKilling Me Killing Youと対を為す楽曲。

この楽曲によって、Sentencedは孤高の存在となった。メタルという狭い枠組みの中で語るにはあまりに惜しい奇跡の名曲。全編を支配する悲哀というカラー。美しさと激しさが完璧な形で同居したノーザンメランコリックメタルそのものと言える楽曲である。

そして、このPVの映像と楽曲。胸が締め付けられる悲しさ…

映像は、最後の時まで貫き通される、ある老夫婦の愛の形だ。そこに時折挿入されるバンド演奏はシルエットのみで表現。切なさの表現がハンパない。

一見、地味。そして、いかにもSentencedらしい。

Miika Tenkulaは何と言う楽曲を生み出してしまったのだ!

そして、Ville Laihialaの表現力の凄まじさ!

奇跡の映像美と楽曲は、今後も永遠にその輝きを失うことはないだろう。

 

Sentencedの全アルバム中、最も聴いたのがこの7thだ。自分にとっての"神アルバム"。メタル人生で意図的に同一のアルバムを2枚買ったのはQueensrÿche"Operation: Mindcrime"とコレだけだ。楽曲の完成度が高いのは言うに及ばず、アルバムの最初から最後まで完璧な構成。楽曲の配置に至るまで細心の注意が払われていることが伺える。

『初めてSentencedを買うならどれがオススメですか?』と聞かれたら、迷わずこのアルバムを買いなさい!と即答する。コレがダメなら全部無理だろうな。

 

 

そして最終章となるのが、2005年発売の8th"The Funeral Album"

正に"葬送"の名の通り、このアルバムの発表前に解散が決定していたのだ。

最高傑作であった7thの後であるため、もはやそれを超える事は不可能なのは分かりきっていた。結果的に言うなら、確かに7thを超えているとは言い難い。作風としては予想通りのメタル・アルバムで、前作もかなりアグレッシヴなヘヴィメタル・アルバムであったが本作に至ってはアイデンティティとも言えたメランコリック感はかなり減退している。

行き着くところは、シンプルなヘヴィメタルだったということだ。

が、本作が駄作だったと言っているわけではない。単に7thとの比較の話しをしているだけであって、本作単体でメタル界に照らし合わせてみるなら望みうる限りの最高峰に位置するハイクオリティ・アルバムであったのは間違いないところだ。

前作同様に、アグレッシヴなメタル曲から絶望的なバラードに至るまで一切の隙や妥協は無く、アルバム全体の楽曲がオープニングからエンディングに至るまで慎重に構成・配置されている。

アルバムのオープニングを飾るのはMay Today Become The Day

メロディックメタル。ただそれだけなのに、Miika Tenkulaという男の手にかかれば、それはSentencedそのものの楽曲であり、根底にはいつも切なさが表現される。

そしてMay Today Become The Dayと対となる楽曲Vengence Is Mine

Ville Laihialaの表現力によって、いつもMiika Tenkulaの楽曲は昇華される。

Miika Tenkulaが魂なら、Ville Laihialaは存在の証明と成る肉体なのだ。

 

Sentencedとしての、本当の最終楽曲End Of The Road

タイトルといい、楽曲といい、彼らの道程の終わりを示すにこれ以上ない楽曲。

絶望的な悲哀感。終わってほしくない。そう願っても受け入れざるを得ない最後の時。このまま底無しの悲しみの中を彷徨うこととなるのか…。

だが違うのだ。Sentencedの本当の凄さはこの楽曲のエンディングへ至るまでの完璧なる構成にあるのだ。自らの道程の幕引きを最高の形で締めくくることとなる。

彼らは最後に"希望"を残した

Sentencedという物語の完結。だからこそのEnd Of The Road

 

こうして傑作を発表しながらも解散を選択したSentenced。

正にバンドの絶頂期でもあったため、『惜しまれつつ…』という言葉よりも先に『なぜ?』という疑問が出た。それはみんなも同じ思いだろう。

せめて、一度でいいから日本の地へ降り立ってほしかった…

 

あれから7年…

Sentencedタイプのバンドはいくつも見てきたが、このバンドを超えるどころか比肩するバンドすら現れることの無いまま現在に至っている。

『再結成など、自分の墓に唾を吐くようなものだ』

Sentencedの復活などあり得ないと頭では分かっていても、心のどこかでそれを願っている気持ちは確かにあった。それも、Miika Tenkula亡き今は永遠に叶わぬ夢となった…

 

Sentencedは、名実共に伝説のバンドとなった

最も悲しい形で…
ありがとう、Miika Tenkula

そして、さようなら

 

 

P.S.

今回紹介した楽曲は全て故Miika Tenkulaの作品です。

そう、『真に非凡なアーティストであり、Sentencedそのものであった魂』… 

 

Miika Tenkula's Best Work

May Today Become The Day(8th"The Funeral Album)

Nepenth(3rd"Amok")

The Way I Wanna Go(EP"Love&Death")

Brief Is The Light(7th"The Cold White Light")

Fragile(6th"Crimson")

Sun Won't Shine(4th"Down")

The Rain Comes Falling Down(5th"Frozen")

Killing Me Killing You(6th"Crimson")

No One There(7th"The Cold White Light")

End Of The Road(8th"The Funeral Album)

 

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コメント: 1
  • #1

    あーさん (金曜日, 01 1月 2016 13:46)

    詞もメロディも美しい、最高のバンドでした。今でも聴きます。ずっと繰り返し聴きたい。

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