Amorous Anathema/Embraced

スウェーデン出身のシンフォニック系メロディック・デスメタル・バンドの1st。発売は1998年だが、一時期廃盤からの再発もの。

ツインG&ツインKeyを含む6人編成のバンド。…6人?
そうなんです。G・G・Key・Key・vo・BsでDrだけ足りません。ちなみに、2ndではdrを迎え入れて7人編成となりました。
で、このうちのkey(Piano)の一人がSven Karlsson。誰?って…そりゃあもう、Soilworkのkeyですよ。このバンドを脱退後、一時期プログレッシブ・メタル・バンドの Evergrayに在籍してSoilworkへ。4thであるNatural Born Chaos以降は彼がkeyを弾いてます。
それだけでも買いなんですが、音楽性も凄いの一言。
Soilworkとは似ても似つきませんよ。

音楽性はゴシック系メロデスなのかな、たぶん。疾走するパートも"時折"という程度で、ブルータリティやアグレッシブさも気持ち程度といった具合で、とにかく"美しさ"に比重が置かれています。
Sven Karlssonの優雅な(ある意味、狂った)ピアノメロディが楽曲最大のポイント。ツインGで、更にはもう一人のKeyもいるはずなんですが、Gと同等かそれ以上の比率でピアノが導入されています。
6~8分台の楽曲がメインという大作指向ですが、一般的なメロデスより格段にドラマチック。プログレッシブな方向性も多分にあり、テクニカルなパートや緩急のつけかたもかなり特徴的です。

1曲目のA Dying Flameから耽美メロデス炸裂。
ちょっとした疾走パートはあるもののアグレッシブな感じはほとんどなく、ゴス時代のDark Tranquillityを思わせたりする。
1曲目なので、メロデスの方法論は大きく崩してはいませんね。
Gの泣きのメロディと美しいピアノメロディで卒倒確実です。
3曲目あたりは同路線とも言える楽曲。

で、問題の2曲目The End ...And Here We All Die。
イントロのピアノで神盤確定!
というか、全編でピアノ鳴りまくり。Gなんて、ほとんどオマケ。ついでに言ってしまえば、voもオマケなぐらいピアノが凄い。
このピアノメロで泣くなという方が無理ってもんです。
8分半のメランコリック・ピアノ・デスメタル!
Sven Karlssonって凄い人だったんだなぁ、と再認識。
4曲目なんかはこの曲に近いですが、2曲目の方が質は上。

6曲目が最強とも言えるMemento Of Emotions。
イントロの美しさだけで"グリーン・マイル"10回分の涙が出そうな勢いのメランコリックさ。粘着質系のvoが雰囲気を壊していないでもないが、それを割り引いても美しさは全く色褪せない。
その耽美メロディをひきずりながらvoインして軽く疾走。
楽曲全編、どこまでも儚く美しい。
Eternal Tears Of SorrowのChaotic Beauty時代からデス要素を大幅にカットして、その分メランコリーをテンコ盛りにした感じ。
このアルバム中では珍しく疾走パートも豊富。
隠れた名曲とは正にこの曲のこと。

本編ラストの8曲目Dirge Of The Masquerade。
ピアノ炸裂なのは当たり前として、アルバム中では異例なメロデスっぽい楽曲になっている(いた、メロデス・バンドなんだけどね)。
それでもブルータリティには程遠いんだが。
ちょっとだけブラスト使ったりしてるのもポイント…かな。

さて、ボーナス2曲のうち1曲はBig In Japan。
知る人ぞ知る、ドイツのテクノ/ダンス・ユニットAlphavilleのヒット曲をカバーしてます。カバーの方向性としてはGravewormがカバーし たPet Shop BoysのIt's A Sinと同じと考えていいと思います。ただし、あそこまでオリジナルを崩してはいませんよ。
これがまた無茶苦茶にカッコイイというのもポイント高い。
イントロからサビ前までは比較的オリジナルに忠実にカバーしてますが、オリジナルと違ってサビで疾走させちゃうのがいいです。
Keyなんかはオリジナル同様にオーケストラヒット系。
疾走曲無しのアルバムなので、これがまた新鮮だった。

もう1曲のボーナス曲Book Of Keysもまた素晴らしい。
これをボーナスにするか!?ってくらいヤバイ曲です(ボーナスになった理由は、再発にあたっての収録だからですけど)。
前半はスピードを抑えめにして、後半へ向かって疾走。
この美しいピアノメロディが疾走しちゃうんだから。
疾走しながらのGソロも異様にカッコイイぞ。

アルバム全編Sven Karlssonのピアノ乱舞状態。
メロディ派は必聴のアルバムでしょう。
もちろんSven Karlssonのピアノ目当てに買うのもアリです。
ネットの普及している今なら、手に入れやすいんじゃないかな。

これは、探してでも買ってくれ


Amorous Anathema (Bonus Track Version) - Embraced

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