Sheol/Naglfar

スウェーデンのメロディック・ブラックメタル、前作より約4年半ぶりの2003年3rd。

アートワークは、Dark TranquillityのNiklas Sundinが担当。

 

今やメロディック・ブラックメタル界の帝王とも称される彼らだが、本作においてもブラックメタル的な邪悪さよりも叙情的でメロディックであることに重きを置いた音楽性なのは不変。あくまでも"メロディック"なのであって、"シンフォニック"ではないのがNaglfarの特徴とも言える。シンフォニックではないので、シンセも使われてはいるがバックで微かに使われたりしているだけだ。

楽曲のスピード自体も激速ではなく、爆走と疾走の間くらい…って、どれくらい?(笑。狂ったような速度を持ったバンドが多いですからね、ブラックメタルは。ツーバス連打は当然でブラストビートは炸裂するもののそれ一辺倒というわけではなく、基本は程良い疾走感を持ったメロディックなブラックメタル。Dissectionタイプなのは間違いないのだが、メロディをより聴かせる音楽性という意味ではNaglfarの方が上だろう。Dissection亡き今、無人の荒野を行くが如くもはや独走状態、他の追随を許さないほどメロディ重視型ブラックメタルの頂点を極めていると言える。

ツインギター構成なので、それを存分に生かしたメロディが楽曲の聴きどころ。寒々とまでは行かないが叙情的で、そうした部分が楽曲全体を支配しているため、メロディックすぎるサウンドと相俟って攻撃性は非常に薄い。とにかく、全体的にも常にメロディが泣きまくる。

ドラミングは前述のようにブラストビートを多用しているが、連打されるツーバスと共に音の一つ一つのツブが綺麗に分離しているので安定感がある上にパワフルで気持ちがいい。

voは絶叫型をメインに、低音の吐き捨て型も併用という感じ。

 

1曲目の"I am Vengeance"から叙情メロブラ全開!

絶叫と共に炸裂するかのようなイントロの殺傷力で圧倒される。その後の畳み掛けるように吐き出されるグロウルのvoと、怒涛の勢いで責め立てるバックの演奏がカッコイイ名曲。

…なのだが、この曲の本当の聴きどころは、哀愁をぶちまけながら疾走する後半の展開ですね。

 

続く2曲目の"Black God Aftermath"はNaglfarを代表する1曲。

スウェディッシュ・メロディック・デスメタルだよね、これは。Naglfarの楽曲自体が邪悪さは少ないと言えるのに、この曲に至ってはブラックメタル的な面はほとんど無い。ブルータルでアグレッシブ。正に激烈音楽。なのに、非常にメロディアス。エンディングのかすかなピアノ音が泣ける…

 

7曲目の"Unleash Hell"も悶絶必至の1曲。

イントロの殺傷力がハンパない。インパクト抜群のイントロから先はうねるようなメロディに弾きまくるギターが被さって進行していくという展開。中盤は一転してワルツを思わせる展開を絡めて、再び激烈モードへ。若干の邪悪さとメランコリックなメロディが同居した作品だ。

 

全9曲(日本盤はボーナストラック2曲を含む全11曲)捨て曲なし。どの曲もNaglfarらしい疾走感と泣きのメロディが満載。激烈でノイジーな爆走パートや、ザクザクとしたリフを刻むデスラッシュのようなパート、それにゆったりとメロディを聴かせるパートと、楽曲の構成力も非常に高い。

もしメロディック・デスメタルが好きなら迷わず聴いてみることをオススメする。

メロデス好きじゃなくても、メロディ重視派のメタルファンは聴いてみるべき。声がデス系かどうかなんて些細なことだ。これほど良質な叙情的メロディを持ったアルバムはそうそう現れない。

メロディック・ブラックメタル界で燦然と輝く超名盤の一つ。

 

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