Hell Frost/The Unguided

スウェーデン産モダンメロデスバンドの2011年リリース1stフルアルバム。
メンバーは元Sonic Syndicate組のRichard Sjunnesson、Roger Sjunnesson、Roland Johanssonの三人に元NirhtrageのHenric Karlssonを加えた4人。Rogerがリズムギターとシンセを、Rolandがリード・ギターとクリーンvoを兼任しているためドラマーがメンバーに存在しない。ゲストとして、Dead By AprilのPontus HjelmやらScar SymmetryのJonas Kjellgren、HypocrisyのPeter Tägtgrenなど錚々たる面子が顔を並べている。プロディーサーはSonic Syndicateの2nd&3rdを担当したJonas Kjellgren。

一言で言うと、本来のSonic Syndicate的モダンメロデスの姿がここにあります。
元々こうした音楽性になるであろうことはメンバーから見て必然だったのだが、ここまであからさまにSonic Syndicateスタイルを継承してきたのは驚きでもあった。攻撃性のあるリフやメロディを載せたハードエッジなメロディック・メタルにRichard Sjunnessonのアグレッシブなスクリームvoを加味したサウンドで、肝心要のリフやメロディもSonic Syndicateに自分自身が望んでいたものがここに投影・実現されている。
それもそのはずで、Sonic Syndicateの1st&2ndでメインソングライターだったRoger Sjunnessonがこのバンドで再び主導権を握って作曲しているからで、3rd&4thでメインのRobin Sjunnessonと離れたのが大きいと思う。Robinに劣らずモダン化を指向しているRoland JohanssonもRogerと共に作曲にあたっているが、この音楽性を耳にするとRoger色が強く出ているのは確実なところ。たぶんね、Sonic Syndicateでギターソロを入れなかったのにここで入れてきたのはRolandの意向が強かったのかな、と思う。
モダンでありながらメロデス臭さをそれなりに残しているのがアルバムの特徴だろう。
Sonic Syndicateの4thからの関連性で言えばRoger作曲の"Break Of Day"や"We Rule The Night"あたりの影響は無視できず、そうしたモダンさはそのまま引き継いでいる。適度なクサさとキャッチーさを同居させた上でメロデス的な味わいも残して楽曲を仕上げるのはセンスの表れ。2ndのレビューでも述べたが、このアルバムを聴くとやはりRoger Sjunnessonはモダンメロデス界の至宝だろう。
ギターメロディよりシンセの創りだすメロディの方が比重が高いというのもSonic Syndicateから続く特徴と言える。時折メタリックなフレーズは飛び出すが、ギターソロ以外はリフやバッキングに徹している。
Richard Sjunnessonのスクリームvoの冴えも見逃せないポイントだ。この男、実はただ怒鳴っているだけなのだが(笑)アグレッシブさではモダンメロデス界きってのブチギレヴォーカリストで、その魂の叫びにも似たスクリームは"声域が狭い"とか"怒鳴ってるだけ"とかいう批判自体を寄せ付けない強烈さを持っている。

 

Inherit The Earth
イントロでいきなりネオクラシカルに弾きまくってるギターを聴いて駄曲の烙印を押すところだったが、その後はしっかりとSonic Syndicateを継承したサウンドを披露。特にブリッジからサビのメロディで卒倒するところだったよ。元々はRogerが書きためていた楽曲をこのバンド用にアレンジしたらしいね。

 

Phoenix Down
最初から最後まで鳥肌立ちまくりの曲。ハードなメロディック・メタル的楽曲で、疾走するパートから一度軽く落としてサビへ繋げる流れで感動確実だ。シンセの作り出すメロディも素晴らしいと思う。この曲はRogerがSonic Syndicateの4thで使おうとしたけど見送ったもの。やはりRogerの凄さを実感するな。

 

Collapse My Dream
うお! このテクノメタルっぽい出だしでビビったが、その後はモダンメタル的に進行。メロデス的なものは全くないしサビもポップでキャッチーだが、Sonic Syndicateの4thから見れば圧倒的にメタル感は強い。
たぶん、これがRogerとRolandが合作した曲なのだろう。

Sonic Syndicateらしいモダンさを求めているメロデスファンは間違いなく好きになれる。
モダンメロデスの中でもモダンさに重点をおきながらハードな部分とキャッチーな部分の同居をさせた上で適度なクサさを持ったアルバムを好むならマストだし、Scar Symmetry的なサウンドが好きなら買いだ。
ただ、今後という部分で見るとRoland Johanssonの存在がカギとなりそう。本作でもRoger単独で書き上げた曲に関してはクオリティが極めて高いのに、合作もしくはRoland単独となるとモダンさばかりが表に立ってメタルっぽさが明らかに減退した上クオリティも低いと感じる。またギターソロの導入もRolandの意向が強く働いているのだろうから、個人的にはあまりRolandに関わってほしくないのが正直なところ。
このアルバムでハッキリしたが、Roger SjunnessonさえいればSonic Syndicateとしてのサウンドはほとんど再現できるんだな、と思った。なんせ、アルバム1~3曲目のキラーはRoger単独作曲なんだもん。

 

Hell Frost - The Unguided

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