Idolator/Blood Stain Child

日本のトランスメタル/メロディック・デスメタルバンドの2005年リリース3rdアルバム。
本作までは日本のローカルバンドだったが、以降はドイツのDocktard1やアメリカのLocomotiveと契約を交わし、2010年にはDisarmonia MundiのEttore Rigotti率いるCoroner Recordsとの契約に至った。

1stはChildren Of Bodomを完全コピーしたようなメロデス、2ndもベースはチルボドスタイルのメロデスだがシンセあたりにその後のエレクトロ感覚が見え始め、本作で音楽性を大幅にチェンジしている。
音楽性としてはChildren Of Bodomに代表されるようなメロスピ型メロデスをベースとしてトランスなどのダンスミュージックの要素を大胆に導入。CoB的と言っても1stや2ndのようなあからさまな形ではなく、スピーディーでアグレッシブな展開にクサメロを大投入するというものであって、CoB的と表現するのは語弊があるのであればフィンランド型メロデスをベースにしていると言ってもよい。トランス要素に関してはメロデス的な部分に付け足したというレベルではなく"融合"という言葉が当てはまるほどの導入具合を見せる。
シンセ的にはほぼ全編で鳴り響いているがトランス/ダンス系のサウンドだけではなく、サイバーテイストなものやシンフォニックなもの、はたまたチープなゲームミュージック的なピコピコ音まで様々な音色が使われている。ただシンセと同じくらいギターも活躍しており、リード面ではクサいフレーズをバンバン連発していたりクラシカルなプレイを見せたりと多彩な印象。ギターソロもしっかりとフューチャー。シンセがモダンな方向へ全力疾走してるのとは逆に、ギターはクサメロデスの方向へ突っ走っているといった感じかな。
ヴォーカルはベーシストのRTOがグロウルを、リードギタリストのRYUがクリーンをそれぞれ担当。比率的には圧倒的にグロウルが多め。クリーンvoに関してはエフェクトをかけている場面が多いのだが、サイバーテイストを表現するにはちょうどいいと思う。ちなみにクリーンは音楽性の変化に伴って本作から導入。

 

Embrace Me
イントロのピアノメロディが楽曲内の随所で現れてくるのが印象的。持ち味のアグレッシブさも疾走感もそれほど無いが、このピアノメロと叙情的なギターメロ、後半の怒涛の展開という合わせ技で感動した。
個人的にバンドの代表曲にして最高傑作はこの曲ではないかと思う。

 

Trial Spiral
突進型のクサメロデスっぽさを前面に押し出した楽曲で、アグレッシブ&スピーディーな展開、サイバー的なシンセの音色、ギターのクサメロというバンドの持ち味が存分に発揮されている。

 

Type-N
こちらはサイバー/トランス感を前面に押し出した楽曲ですね。シンセのアレンジとか女性voの使い方とかは5thにも繋がる部分が見える。前半は一本調子だが、中盤から先が怒涛の展開を見せるので好き。

 

True Blue
衝撃/笑劇のLuna Seaカバー。
演奏的には若干エッジが立っているがほぼ原曲に忠実。問題はヴォーカルがデス声ということ。

現在に至るバンド的な音楽性はこのアルバムで確立されたと言ってもいいだろう。比重的には最新の5thではサイバー/トランス的な部分が増えたが、スピーディーでアグレッシブな楽曲の上に軽快なシンセとギターのクサメロを載せたサウンド…という大筋はこの頃からずっと変わってはいない。変わったと言えばプロデュース面でマイルドな方向性になったことと、ヴォーカル的には圧倒的にクリーンvo主体になったことだ。
Fail Emotions、Illidiance、Simantika、などのロシアン・エレクトロコア/サイバーメロデスが好きならまず間違いなくお気に入りとなるバンドでありアルバムだろう。もちろんSilent Descentなどのサイバー/トランスメロデスファンにもオススメ。あとは、ポストハードコア寄りのピコリーモファンもイケると思う。

メロデス的なカラーを強めに残しながらサイバー/トランス味を融合したという意味ではバンド史上の最高傑作なのはもちろんのこと、この手の音楽性の名盤と言ってもいいんじゃないかと思う。このアルバムの次作となるMozaiqと合わせて聴いておくべきだろう。5thの"ε(イプシロン)"に関しては賛否両論ながら、女性ヴォーカルの採用が気にならず、音楽性も若干マイルドだというのを飲み込めればオススメ出来る快作だ。

 

IDOLATOR - Blood Stain Child

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