Only Inhuman/Sonic Syndicate

スウェーデン産メロディック・デスメタルバンドの2007年リリース2ndアルバム。

1st時点でそれなりにモダンなメロデスをやっていたが、2ndでクリーンvoも投入して完全なモダンメロデス化をはかった。1stはPivotal Rockordingsから、2nd以降はNuclear Blastからリリースしている。

メンバーはデスvoのリチャード、リードギターのロジャー、リズムギターのロビンによるスンネソン三兄弟を中心に、クリーンヴォーカリストとドラム、女性のベーシストを加えた6人編成。キーボードがそれなりに活躍している音楽性だがメンバーとしては存在しておらず、リードギターのロジャーが兼任している。

 

1stからモダン化への道を着実に歩んでいるバンドで2012年現在で4tnアルバムまでリリースされているが、2010年リリースの4th"We Rule The Night"ではモダン化も行き過ぎ感アリアリで、もはやそこに過去のメロデス臭は微塵も無く、スクリームヴォーカル入りのハードエッジ・メタルといった作風となった。

こうしたハードなモダンメタル化への傾向は3rdアルバム"Love And Other Disasters"ではすでに現れていて、2nd以前の音楽性引き継ぐ楽曲と4thへ繋がる楽曲が混在した微妙で中途半端な作風であった。

そうした行き過ぎたモダン化の最大の要因となっていたのは、スンネソン三兄弟の末弟でもあるベーシストのロビンではないかと思っている。1st及び2ndでメインソングライターであったロジャーの関与が3rdを境に圧倒的に低くなり、4thではロビンがほとんどの曲を作曲している状態。ロビンの作曲した曲に関しては明らかにメロデス的な要素を拒否しており、モダンなメタルやオルタネイティヴ系に走っているのだ。

ハッキリ言おう。ロビンが俺の好きなSonic Syndicateをダメにした!

この事はバンドを脱退したリチャード&ロジャー兄弟にローランドを加えた新バンド"The Unguided"が如実に物語っている。ローランド自体もかなりのモダン化指向だがロビンほどではない。ロジャーの感性とローランドの感性が絶妙にマッチして、Sonic Syndicate本来の音楽性を引き継ぐサウンドとなっている。

 

結局のところ、Sonic Syndicateとしての最高傑作は本作"Only Inhuman"だったと言っていいだろう。

メロデス感を多分に残しながらのモダン化というSonic Syndicateのアイデンティティは本作で頂点を迎えたと思う。初期のScar Symmetryを更にハードエッジ化して疾走させるというスタイルは、このバンドを後追いしたフォロワーが存在するわけではないが"Sonic Syndicateタイプ"と形容してしまうほどインパクトが強かった。スウェーデンのメタルコア系バンドに与えた影響はそれなりにありそうな気がする。

 

楽曲は疾走曲主体で構成されており、クリーンvoとスクリームvoの対比とメロディラインの起伏、サビでのメロディが一層輝くダイナミックな作風が目立つ。クリーンvoの比重はそれなりに高いのだが3rd以降で見られるようなスクリームvoを後方へ引っ込めるというようなサウンドではなく、しっかりとスクリームの激しさを前面に押し出しているのも気持ちよい。ちなみに、低音スクリームはクリーンヴォーカリストでもあるローランドが兼任している(The Unguidedでのローランドはリードギターとクリーンvoを担当)。

ギターサウンドに関してはほとんど自己主張することもなく、一応はツインギター編成ながら二人でバッキングをしているような状態。リードギタリストもソロなどは披露せず、リフとバッキングでメロディの大部分を構成している。その分シンセの活躍度は1st以上で、ギターがメロディ部分にそれほど関わっていないのをシンセが補っていると言えるだろう。まぁ、シンセ自体がリードギタリスト兼任なので仕方ないけど。

ただ、ギターについてはメタリックで魅力的なリフやフレーズが全編で乱舞している状態なので物足りなさは感じないだろう。逆に、シンセとの相乗効果で音圧が非常に厚く感じられてハード感は強い。

 

ちなみにこのバンドを"メタルコア"と呼ぶ向きもあるが、ハードコア的なリズム系があるわけでもないし独特なビート感もブレイクダウン/モッシュパートといった要素も加えられていないのでメタルコア的なものは全くない。音楽性からすればメロディック・メタルのハード&ヘヴィさを強調したモダンメタルの部類。よりアグレッシブさを際立たせる要素としてスクリームヴォカルを載せていると考えていいだろう。

 

Aftermath

シンセのフューチャー度が高いわりにはアグレッシブさが少しも減退していないモダンメロデス。アルバム冒頭にキラーチューンでもあるこの曲を配置したのはインパクト強すぎ。サビでの更なる盛り上がりでゾクゾクしてしまう。クリーンvoパートも魅力的だが、スクリームvoの冴え渡りが一層際立っている。

まるでThe Unguidedの"Phoenix Down"はこの曲の兄弟ソングのようだ。

 

Psychic Suicide

1stからのハードさがそのまま現れているようだが、そこにクリーンvoを加えることでサウンド的な広がりを感じる。ドライヴ感もハンパなく、初期のバンド疾走メロデススタイルを愛するならマストな楽曲だろう。

 

Denied

キャッチーとも言えるモダンさも組み入れながらハード感を失わないロジャーの作曲センスが際立ってると思う。ヴォーカル的にはクリーン主体なのにSonic Syndicateのスタイルが失われていない。

 

やはりRoger Sjunnessonはモダンメロデス界の至宝と言っていい作曲家だ。

ロビンが関与するとどうなるのかは、アルバム中でかなり毛色の違う5曲目の"Enclave"がハッキリと示している。この曲を駄曲だと言うつもりはなく、メランコリックなスローナンバーとして良く出来た曲だとは思う。ただ、Sonic Syndicateらしさがそこにあるかと問われればハッキリと"否"だと言えるだろう。

初期のScar Symmetryなどに代表されるモダンメロデス好きなら完璧な一枚と言える傑作盤。

このアルバムが気に入れば3rd以降を聴くのではなく今なら"The Unguided"を聴いた方がよいだろう。もちろんそのThe Unguidedを聴いてまだSonic Syndicateが未聴ならこれを買うことをオススメする。

 

Only Inhuman - Sonic Syndicate

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