The Diarist/Dark Lunacy

イタリア出身のメロディック・デスメタル・バンドが擦った揉んだの末に(契約関係?)、ようやく2006年に発売にこぎ着けた3rdアルバム。

Dark Lunacyと言えば、ゴシック的な味わいとメロディック・デスメタル的なアグレッションを融合させ、そこに大胆とも大袈裟とも言えるほどのピアノやらヴァイオリンやらを導入したシンフォニック・デスメタルを体現していたことで有名であるが、この3rdでは生弦楽はほとんど影を潜め、前作まで弦楽で表現していた部分はギターへチェンジ。そういう意味では音楽の表現手法が代わっただけで、音楽性としては大幅に変更したわけではない。
ただ、この生弦楽排除の方向性は賛否両論でした。やっぱり生弦楽がバンドの魅力であり個性であったという意見も多々聞かれますが…
そんな些細な事、この完成度の前ではどうって事のない問題です。
見た目の違いに騙されてはいけません!

アルバムとしては、第二次世界大戦中の独ソ戦における『レニングラード包囲戦』…900日にわたりドイツ軍の包囲を受け、餓死・爆撃等によって約70万〜100万人の市民が死亡したとされる…を題材としたコンセプト作。
その重く暗い題材が、悲哀に満ち溢れたDark Lunacyの音楽性と完璧な形で融合している。自分達の音楽性とスタイルを完全に認識しているからこその題材選びと、その表現力。バンドとしての最高峰に到達したように感じる。
コンセプト作とは言うものの、楽曲としては個々が独立していて、その1曲1曲が高いレベルのメロディック・デスメタルを体現している。コンセプトのストーリーを知る事で更なる感動を生み出すのは間違い無いが、コンセプトをいう事を理解せずとも楽曲の魅力だけで悶絶・卒倒必死のアルバムだ。

 

このアルバムの最大の聴き所はSnowdrifts
Dark Lunacy史上、最高の名曲Fragile Caress
それを遥かに超越する耽美メロデスの極致が本楽曲である。

ピアノのイントロから、女性voの悲しく美しい囁き…。本編に入ると、デスvoと女性voがデュエットする形となるのだが、そもそもサビは女性voの方だ。
全体的にはミドルテンポで、重めのリフにデスvoと美しい女性voが悲しみをたたえて流れていく。『慟哭』…デス声は正にソレだ。これほど哀しげなデス声はこのvoだけだろう。それが女性voの冷たく哀しい声と合わさって激情となっている。
もう、この曲だけを何度リピートしたことか…
前半部分でのクライマックスと言えるのがこの曲である。

 

10曲目のMotherland
5曲目のSnowdriftsに対する形の、後半のクライマックスがこの曲。
ただの爆走曲と思うなかれ。
そこはDark Lunacy。怒濤のドラマチックな展開が待っている。
緩急・静動を自在に操り、激しさの中にも圧倒的な悲哀をたたえている。
弦楽など無くても凄まじくシンフォニックだったりする。

圧倒的な表現力でドラマチック・デスメタルの至高を提示したDark Lunacy。
Keyや生弦楽の導入は最小限に抑えられ、そういう意味ではシンフォニックとは言えなくなったが、ギターのフレーズは前作までのヴァイオリンのプレイをトレースしている感じで、シンフォニックじゃないのにシンフォニックに感じてしまうという、ある意味では前作までの方向性をさらに押し進めた作風となっている。
前作までと比べればアグレッシブ度は増しているが、メロデスというジャンルの中ではそれでも耽美度は圧倒的に強い。表現のスタイルが変わろうとも、Dark LunacyはやはりDark Lunacyであったということだ。このバンドは自己のスタイルを完全に熟知している。だからこそ到達出来た慟哭メロデスの究極の作品である。

 

全てのメタル・ファン必聴のアルバムである!

 

The Diarist - Dark Lunacy

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