We Rule The Night/Sonic Syndicate

スウェーデン産モダンメロデスバンドの2010年リリース4thアルバム。

えー、本作からこのバンドは"エクストリーム・メタル"にジャンル変更します(笑。

これまでの音楽性は先日公開した2ndのレビューを参照した方が詳しいが、1stから3rdまで順調に(?)モダン化してきたバンドの2012年現在最新作。2011年に活動休止を発表したものの2012年に再始動すると再発表。その再始動メンバーには主要なソングライターとしてRobin Sjunnessonしか残っていない。

 

2ndのレビューにおいてボロクソに叩きまくった本作だが、それは「自分の好きなSonic Syndicateか」どうかで"否"を突きつけただけであって、このアルバムが駄作だと言っているわけでは決してない。

そもそもSonic Syndicateというバンド自体がアルバム発表毎にモダンさを増強して変化させていたような状態で、固定した音楽性自体が確立されていたわけではなかった。そうした音楽性だから、どの時代の音楽性が好きかはファンの中でも相違があるだろうし、そもそも自分自身がバンドの最高傑作だと持ち上げている2ndについても、ファンの中では1stがより傑作とか本作の方が上とかいう意見も存在するだろう。

 

そんな本作だが、メンバーチェンジによってクリーンvo(一部低音部分のスクリームvo)を担当していたバンド最年長のRoland Johanssonが脱退して新たにNathan J. Biggsが加入、Richard Sjunnessonとのツインヴォーカル編成となった。というか、Nathan J. Biggsがメインヴォーカリストと言っていい状態。

前作3rdから作曲面で関与を強めていた最年少のRobin Sjunnessonは本作ではメインソングライター化して音楽性をコントロール。それまでのメインソングライターRoger Sjunnessonはサブ的役割になった。

それがどれほどの音楽性の変化となったかは、実は3rdを聴いた時点で判明していることではある。

バンドのモダンながらもメロデス的なサウンドというアイデンティティはRoger Sjunnessonのセンスから生み出されていたということは、3rdの中でRobinが主導権を取った楽曲とRogerが関与した楽曲とで大きな違いがあることでも分かる。Robinの指向としてはおそらくよりモダンなメタルなのだろう。極端に言えばスクリームvo自体も排除することも厭わない気がする。それほどモダン化指向がハッキリとしているのだ。

 

もはや過去のSonic Syndicateとは別のバンドと考えて聴いた方がよい音楽性。その辺りは昔からよく言われる"バンドロゴが変わった時は音楽性も変化した時"という法則がそのまま当てはまるサウンドだ。

まずこれは、メタルコアでもメロディック・デスメタルでもないということ。スクリームvoは存在しているが楽曲内での扱いはバッキング的な状態…なのは3rdも同様。なにより顕著なのはメロデス臭どころかアグレッシブさも抜きさって、完全メロディ指向のモダンメタル化という方向性。そもそも"モダン"なのは前作までも同じ方向性なのだが、本作に至ってはハードさを抑えてキャッチーで聴きやすいメタルっぽいモノになった。

そう、これは"メタルっぽい音楽"であってすでにメタルとは呼べない領域に足を踏み入れている。ポップロックあるいはポップメタルと言っていい。3rdで見られた中途半端さはここには無いのが本作のポイント。

徹底して聴きやすさにこだわった事によってギターサウンドもエッジが立っておらず、シンセの存在感が際立つこととなった。リフ自体はメタリックな感覚が残っているがメロディ自体の攻撃性は減退していることでキャッチーさが一層目立つ結果となっている。とにかく耳触りの良いサウンドがアルバムの特徴だ。

新voのNathan J. Biggsについてはナチュラルで聴きやすい声質で、それもサウンドに高い融合性をもたらしていると思う。キャッチーさを増長しているとも言えるかな。プロデューサーも前2作から変更してアメリカ人のToby Wrightが担当することとなったことも大きなサウンド的変化の要因と言えるだろう。

 

Turn It Up

最初聴いた時は呆然・唖然として、ここまでモダンさを徹底したら批判する気にもなれん、というダンサブルな楽曲。メタルっぽい何か…というような歌謡メタル化してますね。ちなみに作曲はRobinが担当。

 

Burn This City

この4thらしさとこれまでSonic Syndicateが追求していたモダンさが融合した楽曲。エッジの立ったメタリックなパートとポップでキャッチーなサビメロパートの対比が面白いし魅力的でもある。この曲はどうやらRobinとRogerの合作のようで、そうした二人の持つセンスがしっかりと噛み合っていると思う。

 

Black And Blue

これもRobinとRogerの合作による楽曲で、サビメロのポップでキャッチーさが際立っている。Robinとしてはこういう普遍的なメロディを書くのが実に上手いと思う。でも、もはやメタルじゃないね、これ。

 

この音楽性を追求するならスクリームvoは不要だよね…とか思ってたらRichard Sjunnessonが脱退して新バンドのThe Unguidedを立ち上げた。今後Sonic Syndicateが歩む道はこれでハッキリとして、よりオルタネイティヴ&ポップメタル化していくのだろう。もちろんシングルヴォーカル体制で。

過去のSonic Syndicateを知らなければ、メタルコアでもスクリーモでもメロデスでもないちょっとハードでポップなモダンメタルとして幅広いメタルファンにオススメできる好盤。ただ、ポップさやキャッチーさが行き過ぎてる面もあるため、メタルファンの中には嫌悪感を示す向きもそれなりにある注意盤。

もし2nd辺りの音楽性が好きなら確実にスルーをオススメする。その代わりにThe Unguidedへ流れていくように。The Unguidedこそ本来のSonic Syndicate的モダンメロデスの進化系なのだから。

 

We Rule The Night (Exclusive Bonus Version) - Sonic Syndicate

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