Unbound/Vanisher

アメリカのメタルコア/モダンメタルバンドの2012年リリース2ndアルバム…のはずなんだが、公式サイトではこのアルバムをデビュー作としており、2010年リリースの"The History Of Saints"は無かったことにされて情報が一切記載されていない。同名の別バンドかと思ったがメンバー的には若干のチェンジはあるもののメインメンバーは同一なのでそんなことはない。全く意味が分からん。どうしてこうなった?
メンバーはBloodjinnのKyle Odellを中心に、KillwhitneydeadのJustin Reichが参加。Glass CasketのAdam Codyは本作ではメンバーから外れている(解雇?脱退?)。また、ドラムもメンバーチェンジした。

前身のZero System時代からVanisherの1stまではメロディック・メタルコアで、Bloodjinnのギタリストが立ち上げたバンドということもありガッツ系メタルコアかと思うと全くそんなことはなく、正統派メロディック・メタルに限りなく近いメタルコアだった。実際のところメタルコア的なところはスクリームvoくらいのもので、疾走感はあるもののアグレッシブとまではいかないサウンドでメロデス的でもなかった。
本作でも路線的には1stと同様のメロディック・メタルではあるが、前作で見られたメタルコアっぽさは更に少なくなり…というかほぼ消滅し、オーセンティックなヘヴィメタルへ完全に歩み寄った。リフやリズム系にもメタルコア的なものは全く無いし、ブレイクダウンやモッシュパートも排除されている。ヴォーカル的にもグロウルが使われるのはごく一部でほとんど一瞬といっていい。完全にノーマルvo主体で進行する。
このバンドのメロディセンスの素晴らしさは前作で証明されていたので今更驚くことではないが、前作で若干見られたBloodjinnっぽさは完璧に払拭されてVnisherとしてのメロディック・メタルを確立できたことは大きな進歩と言える。メタリックではあるけど攻撃性はほとんど無く、疾走感はあってもアグレッシブというにはマイルドすぎる音像も、元々持っていたメロディックさを強調することに成功していると思う。
叙情系メロディック・メタルとしては欧州的ではあるがそこまで濃い甘さを押し出しておらず、モダンなヘヴィメタル上にクサめのメロディを載せた感じだ。このあたりはBloodjinnやKillwhitneydeadといったそれなりに実績のあるメジャーバンドに所属するメンバーが主導権を握っているので、クサメロ投入のサジ加減も非常に上手いと思う。メロウなメロディがバンバン投入されてるわりにはクドさを感じないサウンド。

全曲がメロディック・メタルとしては良曲で相当に気合の入ったアルバムだ。
3曲目の"Destined To Drown"は、Zero System時代のEPと1stに収録されていた"Oceans"をリメイクしたもので、印象的なイントロやサビメロはそのままに疾走パートを追加したりとダイナミックに変化。個人的には断然オリジナルの"Oceans"の方が好きだが、こちらのバージョンもリメイクとしては良好だと思う。
ラストのReactionはメランコリックになりすぎずにメロウなのがいいね。
メロディック・メタル好きはもちろん、メロディック・メタルコア、モダンメタルなど、メロディ重視で少し激しめのヘヴィメタルを好むリスナーなら聴いておくべき良盤。本年ではこの路線はNoDramaの一択かと思われたが、個人的にはこのVanisherの方が上を行ってる気がする。Kyle Odell、やっぱりすごいね。
ちなみに、昨年リリースのEPとは1曲もかぶってません。

楽曲はbandcampからダウンロード出来ます。
価格は特に定まっていないため、お好きな価格でDL可能。
こういう場合、タダでもダウンロードできるんだよな、bandcampって。

 

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