Veto/Heaven Shall Burn

ドイツのメタルコアバンドが2013年にリリースした7thアルバム。
1st及び2ndはドイツのLifeforceから。2004年にCentury Mediaへ移籍し、3rd"Antigone"はCDは同レーベルからビニール盤は旧レーベルのLifeforceからという変則リリース。4th以降はCentury Mediaでのリリースとなる。ちなみに、日本での配給はHowling Bull(前作のみDoom Patrol)が行なっている。
メンバーは3rd発表後にギタリストがチェンジしたのみで現在まで不変のラインナップ。

前作の叩き文句が「不変の美学、此処に極まれり」でしたね。
Heaven Shall Burnのサウンドは正に"ソレ"です。重戦車の如き突進力と破壊力、煽情力の高いメロディの中にかすかに感じられる叙情性。エモい要素などどこにもなく、徹頭徹尾ブルータルな漢メタルコア。
音楽性は違えど、その精神性は21世紀のManowarと呼んでも間違いはない。
…このあたりは当サイトで過去にレビューした5th"Iconoclast"をほぼコピーしてます(笑。
レビュー内容をコピーしても違和感なくハマってしまうのがHeaven Shall Burnサウンド。それくらい音楽性は不変だし、そもそも変えよう・変わろうという意志すら微塵も感じられない。ハッキリ言えばどのアルバムや楽曲も似たり寄ったりな金太郎飴的サウンドスタイル。そのあたりもManowar的と言える。

7作目となった本作でも基本となるスタイルは過去作と変わらない。過剰なメロディアスさは排除して終始攻撃性を前面に押し出し、アグレッシブに疾走するパートとヘヴィに落とすパートを組み合わせて切り替える。ヴォーカルはブルータリティのある咆哮を轟かせ、クリーンvoなどというものは一切存在しない。
基本スタイルを変化させず本作では過去作に比べ若干メロディックになったかなという印象。もちろん、過剰な装飾性を省いた上でのメロディアスさなのでキャッチーさとは無縁の激烈メタルコアだ。メロディの扇情性に関しては初期のAs I Lay Dyingっぽさが感じられる。ゴリゴリと突進しザクザクと切り刻むキレのあるギターリフも健在。ミドルからミドルハイのテンポで進むヘヴィネスを追求したスタイルも不変だ。
「変わらない事の美学」とも言えるが、誰もがHSBだと一聴して分かるこのサウンド、変わらないこのスタイルこそHSBのアイデンティティと言っていいだろう。HSBだからこそ体現できる音楽世界だ。
そんな中にあって、1曲目のリーダートラック"Godiva"がバンドの"若干"の変化を体現していると思う。
アートワークがジョン・コリアー作の"ゴダイヴァ夫人"。そのジャケ絵のコンセプトに沿った楽曲なのだろうが、サウンド的には突進性よりもメロディアスさが前面に押し出されている。ある意味、HSBらしさという面では相当に薄い。本楽曲以外の曲がここまでメロディアスかというとそうでもないのだが、この楽曲をリーダートラック、またアートワークのコンセプトと同化させたことに本作での"メロディアスさ"という変化のキーワードが見てとれる。HSBらしさを追求した上でのメロディアスさという面では少し行き過ぎかなと思う部分はあるものの、今後のターニングポイントとなる楽曲ではないかと感じる佳曲である。
"Fallen"や"Hunters Will Be Hunted"は、「これぞHSB!!」と言える扇情的で攻撃性のある楽曲に本作で若干増加したメロディが上手く同化した良曲。特に"Hunters Will Be Hunted"の叙情的なメロディは、過去作を凌ぐ濃密さで襲ってくる。進化の方向性としてはこれが正しいのではないかと思う。
"Valhalla"は同郷のパワーメタルバンドBlind Gardianのカバー。
ちなみに、本作でも歌詞的にはHSBらしい社会問題をテーマにしたメッセージ性が存在する。
アートワークにはそうしたメッセージ性も込められていると言ってもいいだろう。

"ジャーマン・メタルコア界の至宝"と称しても何ら誇張とは言えない。
ハードコア的な攻撃性とデスメタリックなブルータリティの中に存在する適度なメロディアスさ。AILD的なサウンドが好きなメタルコアファンなら必聴の一枚。元々のHSBファンも安心して聴けるアルバムだ。
ジャーマン・メタルコアを知る上で欠かせないアルバムなので聴いておくように!

 

VETO (Deluxe Version) - Heaven Shall Burn

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