Lullabies For The Dormant Mind/The Agonist

アリッサ嬢擁するカナダのメタルコア/メロディック・デスメタルバンドが2009年に発売した2nd。

嬢メタル系ではあるが、もはや嬢メタルに分類してよいのかどうか迷うほどの激烈サウンド。

 

音楽性で言えば、メロディック・デスメタルに限りなく寄ったメタルコア。広い意味でのモダン・メロデス系に属している。テクニカルな変拍子リフやプログレ風の起伏の多い展開に、欝系ではないけれどゴシック的な雰囲気も織り込み、叙情的なメロディを主体にアグレッシブな攻撃性も併せ持つという、何でもアリ系ゴッタ煮サウンドをバンドの解釈でメロディック・デスメタル的に仕上げた感じだ。

2007年の1st時からバンドの方向性は不変と言えるが、本作は1stと比較してよりダイナミックな作風になった印象だ。前作でゴシックメタル的な色合いを持ったメロディック・デスメタルに感じられた音楽性だったが、クリーンvoパートもゴシック的と言うよりは単にメロディアスになった印象だし、デス声のパートはよりアグレッシブでブルータルな方向へ特化された。1stでいうところの"Memento Mori"のようなダイナミック展開を持ったサウンドが本作の全体の印象と言っていいと思う。

疾走するパート、メロディアスに歌い上げるパート、ブルータルなグロウルvoのパートが怒涛のごとく押し寄せて、それらをプログレッシブ的に起伏の多い展開の中に同居させたことによって、前作で感じた平坦で地味な印象は払拭され、より"聴かせる"印象深い楽曲が多くなった。ストレートに疾走一辺倒という楽曲は存在せず、かといって展開に凝りすぎて楽曲の勢いやノリが削がれているということもなく、楽曲単位ではもちろんのこと、楽曲内の各パートを際立たせるという意味でこうしたプログレッシブ的な展開は極めて成功している。特にリフなどの演奏的には前作とは比較にならないほどテクニカルな路線に走っているので、そういった意味でも楽曲に起伏を持たせたプログレ的展開は重要な要素だと思える。

 

さて、このバンドで本来一番語られるべきなアリッサ嬢のvo。前作も女性voとは思えないほど極悪なグロウルを轟かせていたが、本作では正に"ブルータル"と呼べるほど気合の入ったグロウルを吐き出しているのは個人的に評価が高い。ただ、中音から低音の吐き捨て部分は最高なのに、高音でシャウトするグロウルに関しては線が細く苦しそうな感じを受ける。クリーンのノーマルvoは至って普通の声質。クリーンについてはそれほど語る部分は無いが、グロウルとクリーンの両刀使いという部分では極悪グロウルと女性的なクリーンを一人で操るそのギャップが評価する上で非常に重要。あの声でこの声かぁ…みたいな(笑

 

3曲目の"Thank You, Pain"

1・2曲目がかなりアグレッシブな分、この2曲目で少しお落ち着いた感じがする。アルバム中でも特にクリーンvoの比率が高く、なおかつブルータルさも他の楽曲に比べれば低い。メロデス的というより普通にデス声フューチャー型メロディック・メタルだが、サビではゴシック的な雰囲気もある。

 

7曲目の"Globus Hystericus"

あまり起伏に富んでいるとは言えないが、その分アルバム中では比較的ストレートなノリを感じることのできる楽曲。テクニカル要素も薄めで、サビも含めて全体的にアグレッシブなので入りやすい。

 

9曲目の"The Sentient"

7曲目とはアカペラの"白鳥の湖"を挟んだアグレッシブな楽曲。前の曲が静かに終わったかと思うと、いきなり極悪グロウルで幕開けする本楽曲で度肝を抜かれる。これもテクニカル要素は薄い楽曲だが展開の起伏は激しく、疾走するパートでも叙情的なメロディが散見されるが、サビメロは特にメロい。

 

プログレ的な展開とテクニカル的な趣ではこの曲が一番だろう。個人的にもアルバム中では最も好きな曲の一つ。ブルータルなAメロから一変、Bメロではいきなりメロディアスに展開。サビは演奏はアグレッシブなのにアリッサ嬢が朗々と歌い上げる。エンディングは2分近くもあるんだが、淡々と静かに終わるかとおもいきや、最後の最後に劇的展開が待ち受ける。こういうドラマチックなのは大好きだ。

 

音楽性はもっとHR寄りのメタルコアだがほぼ同時期デビューで同じく女性voがグロウルとクリーンを使い分けるというIn This Momentに対してはこの2ndで大きく突き放したと思うし、メロディック・デスメタル界で女性voと言えばArch Enemyのアンジェラ嬢だと思うが、グロウルの極悪度で言えば双璧。ただ、高音のシャウト部分と表現力の部分ではアンジェラ嬢に軍配が上がるかな、という感じだ。

フィメールvo系メタル好きは必聴であるのは間違いないが、中には女性voということで軽めメタルとか嫌悪感を示す人もいると思うが、女性voがどうとかは関係なく、全メタルファンが聴いておくべき重要作品と言ってあながち言い過ぎではない。発売当時は聴きまくった、個人的神盤認定作品!

 

Lullabies for the Dormant Mind - The Agonist

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